アナザーワールド 3   

今日も今日とて、行政特区に参加したスザルルナナは三人で仲良く白い大きな家(バリアフリー対応)で
暮らしています。
ゼロは辞めました。ユフィも頻繁に遊びに来ます。
そんな世界のお話。

















 その日は朝から曇り空で、今日一日の様子を反映しているようなものだった。










 行政特区が成立して三ヶ月。新築した家に移住してから、一ヶ月しか経っていない。
 そんなときに、それは発覚してしまった。





「……………。」


 無言の内に仁王立ちする幼馴染を前に、正座して頭を下げたまま顔を上げる勇気が出ないルルーシュは。
 同じように隣に座り込まされたカレンに対してチラリと視線を投げた。
 その先で同じような瞳と視線が合えば、すぐさま。


「…何、眼ぇ合わせてるの?」


 真上から、威嚇するような刺々しい声が落とされる。


「ねえ、僕は言ったよね? 賭けチェスなんて危ない事は止めてって。君はナナリーにも誓った筈だ、もう止めるってそう僕とナナリーの前で誓ったよね?」


 恐る恐る呟いているスザクの顔を見上げれば、強張ったままそう呟いている冷えた瞳とかち合った。
 瞬間、ギロリと光った様な気がするのは間違いではない筈だ。


「なのに、なに?しかもわざわざカレンに護衛させてまで、賭けチェスをやりに行った理由が、建築資金の調達?だから僕の給金を使ってって言ったじゃないか。」


 視線が痛い。
 痛いというよりも怖い。
 隣のカレンはといえば、正座に慣れていないのか足が痺れているのだろう身体をしきりに動かしている。握り締めた拳が膝の上で震えていた。


「ねぇ、カレン。どうして君も、ルルーシュのいう事なんか聞いたんだ。確かにお金が稼げるだろうけど、君だって僕とナナリーが、ルルーシュが危険な事に首を突っ込むのを嫌ってるって知ってるだろう?なのにどうして連れて行ったんだ?」


 腕組をしながら見下ろされる眼光に、身震いしても仕方が無いと二人は思った。
 それほどに今、怒っているスザクは恐ろしい。
 その後ろ、リビングの片隅ではナナリーが車椅子でその様子を見えないなりにも伺っている。その膝にはティーセットが小さなトレイごと乗せられていた。


「ねぇルルーシュ。君は資金の話をしていた時、大丈夫だって言ったよね?半額出すって聞かなかった君に渋々僕が了承して、本当に大丈夫なのかって確認したよね?」

「……あ、あぁ…そうだな…。」


 声の恐ろしさに視線を外せば、それが気に食わないのか僅かに舌打ちしたのが聞こえて身体がブルリと震えた。


「なのに何。資金調達で賭けチェスって。やっぱりあの時、半額出す余裕なんて無かったんだろ?」

「いや…、」

「何?」


 反論しようと顔を上げれば、ギロリと睨み付けられ。しかも遮るように問いかけられて、ルルーシュは言葉を失う。
 けれど、ここで真実を告げておかなければ先が怖い。だから決死の覚悟で口を開いた。


「資金は十分、以前の賭けチェスや株とかで稼いでいた分があった。半額出したとしても、生活に困るような事もなくて。でも、だ…。この先の事を考えると、お金は幾らあっても良いし、その……。」


 本音を言えば。


「……君、貯えが減るのが惜しくなったんだろう?」


 内情を察したかの如く、スザクがそう呟く。


「その…っ、決して三人で暮らす家の為にお金が減るのが嫌だったとかじゃなくてだな!一日、賭けに出れば軽くその…半額出す位の金額を稼げると思ったら…。どうせなら、今後の蓄えだって十分にあった方が良いし。今まで騎士団の資金だってそうやって稼いで来たから…と、その、だな?」


 貯えはあるが、短期間で出費分の金額を稼げると思ったら身体は動いていて。


「一回位、構わないだろうと。そう思ったんだな?ルルーシュ。」


 俺とナナリーが止めろと言った、その後に。
 スザクの口調が変わる。


「…ナナリー。」


 強張った声のままに背後の妹の名前を呼ぶスザクを、ルルーシュは恐怖のまま見つめている。


「ハイ、スザクさん。」


 きっと場違いな位に清々しい笑顔を向けた妹に、視線を向ける余裕はない。


「じゃあ私はお部屋に行っていますから、存分にお二人を叱ってあげて下さい。カレンさん、終わったら私とショッピングに付き合ってくださいますか?下さいますよね?大丈夫です、代金はお兄様持ちですから、色々とお買い物致しましょう?」


 だから。
 そう、黒く呟いた妹に二人は驚愕の視線を向けた。


「お兄様、カレンさん。スザクさんを怒らせたらどうなるのか、身を持って理解して下さいね?」


 ニッコリと。
 笑みを浮かべて首を傾げる姿は可愛らしい。なのに。
 その笑みに浮かんでいる怒りに、ルルーシュもカレンも目を瞠った。


「ナ、ナナリーちゃ…っっ」

「それではスザクさん、終ったら教えて下さい。それまでお部屋で本でも読んでいますから。」


 カレンの呆然とした呟きに言葉を返さず、ナナリーは自分で車椅子を操作するとリビングを出て行ってしまう。
 その後姿を、呆然と見遣ってから。
 二人は恐々と目の前の人物を見上げた。


「……覚悟は出来てるよな、二人共?」


 ウッソリと笑うスザクに、真っ青になった二人が上げた悲鳴は口からは出ていなかった。








 一時間の正座を強いられ、その間ずっと怒り心頭のスザクに責められ。
 総てが終った時、二人はその場から起き上がることが出来なかったという。
















2008/11/01




リヴァルに頼むのも気が引けたルルーシュが、護衛代わりにカレンと賭けチェスに出かけていたのを知った
スザクとナナリーの怒りは凄まじかった様です。

何に怒ったかというと、賭けを続けていたという事&嘘をついたということ。
スザクとナナリーは似たもの同士だと思います。