『アナザーワールド』の三人です。
アッシュフォードの大学の敷地を買い取って家を建てて三人で暮らしています。
ユフィが皇族を離れたのでスザクは騎士を解任されて特派に出戻り。





























 テーブルの上に載る、赤い果実。


「…コレどうしたんだスザク?」


 甘い甘い香りがリビングに広がる。


「いい匂い…イチゴですか?」


 外箱の蓋を開けただけで匂いが強まり、兄妹は首を傾げながらも美味しそうな匂いに表情を緩めた。


「うん、貰ったんだ。特区から政庁に送られてきたみたいで、総督から特派にもってお裾分けされたんだよ。」


 パリパリと音を立てて、パックに付いているビニールを剥がすと果実を一つ手に取る。ヘタを取ると、綺麗に指で表面を拭った。


「ナナリー、口開けて。」


 そう言うと、桜色の唇へと苺を軽く触れさせる。僅かに開いた隙間からそっと押しやれば、真っ赤な苺は少女の口の中に納まった。


「……とっても甘いです、スザクさん。」

「そう?ハイ、ルルーシュも。」


 静かに咀嚼しながら嬉しそうに話すナナリーに、スザクはもう一つ手にとって綺麗にしていた苺をルルーシュへも向ける。
 目の前、というよりも口元へと押し付けられたそれに。ルルーシュは目を瞬かせた。


「ほら口開けて。」


 そう言いながら更に押し付けてくるスザクに。自分で食べられると言いたい所をグッと堪える。今ここで何を言おうと、スザクが変わることはないのだと十分に判っていたからだ。
 ゆっくりと口を開けば、どうみてもナナリーへの対応とは違って無理矢理にも押し込む様子のある動きに。僅かに眉を顰めてから、押し込まれた果実を噛み締める。


「……本当だナナリー。これだけでも随分と甘いな。」

「ハウス苺だからかな?」


 スザクの返事に顔を向ければ、スザクも食べている所で。数回噛むとすぐに飲み込んでしまった。


「…ハウス苺?」

「それ、何ですかスザクさん。」


 口々に疑問を口にする二人に、スザクは手早くまたヘタを取るとイチゴを兄妹の口へと運んでいく。

「ハウス栽培されたイチゴって事だよ。本当の旬は春だろう?でも寒い冬にビニールハウスで栽培されたイチゴは、糖度が高くなって旬のものよりも甘いんだ。」


 特区の中でも比較的早くに手がけていたから、採れたてを送ってくれたんだと思うよと。スザクは笑いながら作業を続ける。ナナリーの口元へと運び、ルルーシュの口へと放り込み、自分で口に含む。
 その内、ナナリーがクスクスと笑った。


「ナナリー?」


 手を止めることなくスザクが問いかければ、ナナリーは顔を綻ばせて微笑みながら呟く。


「私たち、鳥のヒナみたいですねお兄様。」


 隣にいるルルーシュへ顔を向けて、ニッコリと笑う。
 ルルーシュは意味が判らずに首を傾げた。


「ナナリー、どういう意味だい?」

「だってお兄様、私たちスザクさんの手から食べさせて貰っているのですもの。」


 親鳥に、お口に運んで貰ってる雛鳥みたいです、と。笑って話すナナリーに、スザクも笑う。


「そういえばそうだね、気が付かなかったけど。」


 そう言いながらもまたイチゴを口元へと運ぶ。ナナリーは嬉しそうに礼を言って口に含み、ルルーシュは押し付けられたイチゴに視線を落としてから何かを言おうと口を開くが。
 押し入れられたイチゴに占領されて、言葉を言えず軽くスザクを睨み付けた。


「…どうしたのルルーシュ。」


 自分の分を口に入れたスザクがそう呟けば、咀嚼して飲み込んでからルルーシュは憮然と口を開いた。


「自分で食べれるから遣せ。」


 そう手を出すと、スザクが眉を顰める。


「えぇ?どうせヘタ剥かなきゃいけないんだから、僕がやるよ。手が汚れるのは一人で十分だよ。」


 そう言ってまたイチゴに手を伸ばす。


「ハイ、ナナリー。でも夕食前だから、この一パックで終わりにしようか。」


 ルルーシュの晩御飯が食べられなくなるから、とスザクが呟けば。


「えぇ、スザクさん。お兄様の晩御飯が入らなくなったら困りますものね。」


 小さく頷いて、雛鳥宜しくナナリーは口を開ける。


「…だから、そういう問題じゃなくてだな。」


 スザクに食べさせられているという行為が問題なのだと、恥ずかしいのだと。どうしてそう気が付かないのかと頭を押さえるルルーシュを尻目に。
 スザクとナナリーは互いに『ねー?』と口を揃えてニコニコと笑っている。


「………話を聞いてくれ。」


 疎外感を感じてルルーシュは呟くが、その声が二人に届くことはない。
 甘い匂いがリビング中に広がっていて、目の前には大切で大事な人間がいて。
 たったそれだけで、何があっても『まぁ良いか』と考えてしまうルルーシュは、哀しいかな押しに弱いという自分の性質を判ってはいなかった。


「ルルーシュ、どうせだからこのイチゴで何かデザート作れない?」


 これだけでも十分甘いのだから、スイーツにしたら余計に美味しいよと。にこやかにスザクが笑う。


「タルトとか美味しそうですよね、スザクさん。でも今日は遅いから、ピューレにして焼き菓子にしたらどうですかお兄様?」


 ナナリーの声に、ルルーシュは笑う。


「ナナリーの希望はマドレーヌ?シフォンケーキ?それともクッキーかな?」


 立ち上がりながら、箱から一つイチゴのパックを手に取る。


「晩御飯の支度は済んでるから、ソレ位なら作れるよ。焼きたてを食べたいんならクッキーかな…。」

「どれも美味しそうですお兄様。私も手伝います。」

「僕も手伝うよルルーシュ。だからイッパイ作って?」


 口々にそう呟く二人に、ルルーシュは苦笑する。


「なんだ、食いしん坊が二人もいるのか!?」


 ハハハと声に出して笑って、ルルーシュはキッチンへと脚を向ける。
 バツが悪そうに顔を合わせて笑っているスザクとナナリーに視線を向けて、また笑った。


「準備が出来たら呼ぶから、それまで座っていろよ。一から手伝って貰うからな?」


 そう宣言するように呟いたルルーシュに、二人はルルーシュが一番大好きな笑顔を向けた。


「イエス、マイロード!!」

「大好きですお兄様!!」



 口々にそう声高に告げる二人に、ルルーシュもまた二人が大好きだという笑顔を向けるのだ。











2009/02/20


スザクさんによる、ヴィ兄妹の苺餌付けです。
一箱四パック入りで売ってますよね、あの箱ですよ(説明)