行政特区に参加したルルーシュは自分の素性を隠して生活しています。
その為に家を建てて、ナナリーとスザクと三人で暮らしていますとさ。
(不親切な解説)









『アナザーワールド』 2







「あの…すみません、恥ずかしいんですが…。」


 少しだけ俯いて、スザクは突っ立ったままのコーネリアと憮然と仁王立ちするユーフェミアに呟く。
 何が悲しくて、無防備に腰にタオルを巻いただけの入浴中に奇襲されなければならないのか。
 スザクの声にハッと意識を取り戻したコーネリアが、ユフィを連れ立ってバスルームを出ようと背中を向けた。その背中に、ルルーシュは丁度いいとばかりに声を掛ける。


「姉上、申し訳ありませんがナナリーの着替えの手伝いをお願いしても宜しいでしょうか?」

「ん?あぁ…別に構わないが。」

「私とスザクが上がるまで待っていて頂けるのなら、夕食をご一緒しましょう。」


 そう話せば、嬉しそうにナナリーも笑って呟く。


「そうですね、皆で頂いた方が楽しいです。」


 チャプンと水音が鳴り、余りお湯を波立たせないように気を配ってスザクが立ち上がった。そのままバスタブから出ると、スミマセンと一声掛けてから脱衣所に立ち尽くす二人の横を通り、ナナリーの車椅子にかけいてたバスタオルを両手に広げる。
 何をするのかと目を丸くする二人の目の前で、ナナリーを抱いたルルーシュが出てきてそのままスザクの腕の中にナナリーをそっと手渡した。
 慣れた手つきで細い身体を抱き上げたまま、スザクは目を瞑る。その間に、ルルーシュがナナリーの身に着けているバスタオルを外し小さくスザクに告げると、それを合図にスザクが手にしているバスタオルでナナリーの身体を覆った。
 そうして、ゆっくりと車椅子まで歩くと慎重にその身体を座らせる。


「ありがとうございます、スザクさん。」

「どういたしまして、ナナリー。」


 そのままニッコリと笑いあう二人を見ながら、コーネリアとユフィは唖然とその光景を見つめていた。


「姉上、その棚に上がっている左端のがナナリーの着替えです。」


 お願いします、と。声を掛けられてルルーシュを振り向いた二人の目には、腰にタオルを巻いただけで立ち尽くす姿が映る。


「…ぁあ、判った。」


 そういえばとスザクの方に視線を戻したコーネリアは、彼もまた腰にタオルを巻いただけの格好なのを確認して、小さく息を吐いた。
 ユーフェミアはルルーシュに指差された場所にあった着替えを手に取り、既にナナリーの隣へと移動している。


「…本当に、何時も三人で入浴しているのか…?」


 信じ難い様子で呟く姉に、ルルーシュは首を傾げた。


「えぇ。ナナリーを抱える位は私でも出来るのですが、着替えや移動にはどうしても力のあるスザクの存在が必要で…。実際、一人で入れていた時よりも随分助かっているんです。」

「そうか。すまないな…入浴中にいきなり…。」

「いいえ、助かります。着替えをさせた後に一回俺達は入り直すので、その間ナナリーをいつも一人にしていましたから。」


 そう話し合う目の前では、ユフィがナナリーに聞きながら着替えの手順を習っている。


「…さぁ、ナナリーの着替えは私とユフィがするから、お前たちは身体を温めて来い。」


 終れば勝手にリビングに移動しているから、と。コーネリアの声に、スザクは一礼してから浴室へと姿を消した。


「それでは、お願いします。」


 そう言って、ルルーシュも洗面台の近くに置いてあった本と新聞を手にしてから浴室へと戻る。


「任せてくれ。」


 背中にかけられた声に、笑って振り返れば。三人が笑っているのが見えて、何処か嬉しくてルルーシュは笑みを深くさせた。
 カラリと音をさせて扉を閉めれば、早速とばかりに三人の声が僅かに浴室にも響いてくる。
 動く人影を見つめながら、ルルーシュはバスタブに入りなおすと手にしていた新聞をスザクへと手渡した。


「…スザク、俺もまだ見てないから濡らすなよ。」

「了解。」


 バサバサと紙の音を響かせて、バスタブに浸かりながらスザクは器用に新聞を広げ目の前に翳し読み始めた。
 互いにバスタブの縁に身体を寄りかからせながら、ルルーシュは本を開いて視線を落とす。
 ナナリーの入浴が終った後、二人でお湯に浸かる時間は殆どが読み物に費やされる。湿気でヨレヨレにならない様に気をつけながら、スザクは新聞をバサバサと捲りルルーシュは静かにページを捲った。
 一日の終わりにこんな風に静かに過ごせるのが浴室しかないのは仕方の無い事だ。その他の時間を、二人はナナリーの為だけに使うと決めているのだから。
 集中している所為か、背中がズリズリとバスタブを滑っているのにも気にしない。
 足がぶつかるから、何時もの様に向かい側でお湯に浸かる相手の腰を跨いで足を伸ばす。
 換気扇をつけている所為で天井からお湯が滴るという事はない。だからこそ、安心して読書に勤しんでいるのだが。


「……ルルーシュ。」


 バサリと音を立てて新聞を捲ったスザクが、不意に声をかけた。しかし呼ばれてもルルーシュは本から視線を上げない。
 だらしなく片手を浴槽から出しながら、もう片方で本を頭の上に掲げながら。


「スザクこそ。」


 視線も向けずにルルーシュも呟く。スザクも両手を頭の上に突き出すようにして新聞を読んでいる。
 肩までお湯に浸かり、首だけを出している状態だ。
 だから自然と。


「……おっと。」


 新聞をずらさずに、スザクが小さく声を出した。ズリ、と背中がバスタブを更に滑る。
 さすがに男二人が身体を伸ばすには辛いサイズなのだ。日本式に身体をお湯の中に沈めようとすれば、自然と身体は密着する。
 向かい合うが故に主に、尻が。


「…バスタブで溺れたら洒落にならないぞ。」

「ルルーシュが支えてくれるから大丈夫。」


 バサバサと乱暴に新聞を捲り、ゆっくりと視線をなぞらせているスザクはそう呟く。
 ゆっくりと時間が過ぎていく。
 いつもは待っているナナリーの事が気になって、そんなに深く読み入ることはないのだが。コーネリアとユフィの存在もあってか、二人は思いの外読書に没頭していた。








「………流石に遅すぎますわ、二人とも。ナナリーが心配してるので早く上がって下さいな。」




 再度、浴室のドアを開けて姿を現したユーフェミアにそう嘆かれるまで。
 身体の脇に置かれた、互いの膝に肘を付いて読みふけっていた事に、二人は気がつかなかった。













ただ、お風呂の中でお尻つけて浸かってる二人が書きたかっただけ…デスヨ。
ガス代と水道代の節約で、ルルーシュが提案した三人入浴は三人共がお気に入りです。
多分、ルルとナナは一緒に入ってても恥ずかしいとかないと想う。相手はスザクだし。
かえってスザクが初めは抵抗あったんじゃないかしら?


この先はまた細々と書いていきますヨ。

2008/06/26