『人形と騎士』の続きです。










国家の説明とか、補足。



ブリタニア公国 皇帝 シャルル・ジ・ブリタニア

 次席王家 エル家  第二皇子  シュナイゼル・エル・ブリタニア
        ヴィ家   第十一皇子 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア(騎士)
              第六皇女  ナナリー・ヴィ・ブリタニア(騎士)
 その他王家
         リ家   第二皇女  コーネリア・リ・ブリタニア(騎士)
              第三皇女  ユーフェミア・リ・ブリタニア
 などなど。

 国家騎士団     ナイトオブラウンズ
 国家MH       ナイトメア・フレーム


こんな感じです。
受け入れられない、原作の世界観をぶち壊していると感じる方はお戻り下さい。





































『ことの始まり』













 その日。
 王宮のある一室では、次席王家の当主を筆頭に会議が施されるはずであった。
 しかし未だ全員が揃っていないのではと、早めに席に着いた者達が世間話に華を咲かせていた。


「…やはり問題は、ルルーシュの事ですか。」


 次席王家であるエル家のシュナイゼルが、優雅に紅茶のカップを傾けながらも悲痛げに呟く。目の前には第一皇子である、オデュッセウスがため息をついていた。


「そうなんだよ。王朝貴族のうるさ方がね、ヴィ家について色々と噂を投げかけているらしい。」


 本来ならば、次席王家の一角であるヴィ家についてそのような言葉を出すことは不敬罪にあたるというのに。
 権力を持たない王家の一家が肩を持っているのだろう。
 しかし問題はそこではない。
 一番の問題は、その事についての対処をするべきヴィ家の当主である。


「…しかしルルーシュの頭脳は公国一。ファティマ並みの演算能力を有し、その指揮は他国の騎士団ですら舌を巻く、随一と言っていい程の能力ですよ?」


 同じテーブルに付いていたコーネリアが、オデュッセウスにそう問いかけるが。
 困ったねぇとオデュッセウスは顔を俯かせた。


「でも、ねぇ……。」


 迷っているそぶりに、代わりといわんばかりにシュナイゼルが呟いた。


「ルルーシュの、騎士としての能力の事、ですね?」


 その言葉に、コーネリアもまた顔を俯かせた。
 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 エル家と対をなす次席王家のヴィ家の跡取りであり、当主である弟は。希代の騎士であったマリアンヌの急死により当主となった、まだ十七歳の少年である。
 しかしながらその頭脳は人間ばなれをしており、生体演算機と呼ばれるファティマですら凌駕すると言われ、その才能から一部の貴族達からは恐れられている存在だ。
 だが、その彼にもまた最大の欠点があった。


「………まさか、あそこまで騎士の能力が欠如している、とは…ねぇ。」


 ハァ、とため息交じりに呟くオデュッセウスの声に、シュナイゼルとコーネリアもまた肩を落とした。


「あるいは、騎士として生まれなければ良かったのかもしれません…。」


 コーネリアは思いつめたような表情でそう提言した。
 一度、余りの不憫さにその能力を試そうとしたことがあったのだが。
 憐憫すら凌駕する能力の差に、言葉も出なかったのだ。


「そうだねぇ。始めから騎士ではなく、ただの人間であったなら…こうも口さがない噂を囁かれることもなかっただろう。」


 そうなったら、ファティマ並みの人間として注目されるだけでよかったのだ。
 けれど、騎士であるという事実が総てを邪魔する。
 騎士であれば、ある一定のステータスを要求される。それを備えていなければならないとは、誰にも言えることではない。
 けれどルルーシュは次席王家の当主であり、そしてまた騎士である。
 そこが問題なのだ。


「…せめて、ファティマであればよかったのかもねぇ。」


 遠くに視線を投げながら呟いたシュナイゼルの言葉に。
 幾らなんでも、とオデュッセウスは乾いた笑いを浮かべた。


「でもねぇ。考えてみて下さい……ファティマスーツに身を包んだルルーシュを。」


 いい考えとばかりに笑みを浮かべたシュナイゼルに、残りの二人はいやいやと思いながらも脳裏に想像してしまったのだろう。


「……っ、いや、それはルルーシュに失礼だよ、シュナイゼル。」

「今の間は何ですか、兄上?」


 実は良いかもとか思いませんでしたか?と。突っ込みながらも、今度はコーネリアへと視線を向けた。


「コーネリアはどうだい?ルルーシュとパートナーを組んだら最強なんじゃないか?」


 楽しそうだよねぇと笑うシュナイゼルに、オデュッセウスは何度目か分からないため息を付く。数多いる兄弟達の一番上だからこその苦労が、身に染みているのだろう。


「私は……。」


 コーネリアが言いよどむ。
 それが何なのか分からずに残りの二人が身を乗り出すと。


「やはりルルーシュにはデカダンスーツの方が似合うと思うのですが。」


 真面目な顔で呟くコーネリアに、シュナイゼルは笑みを浮かべ、オデュッセウスは今度こそ頭をテーブルに付いてしまった。


「コーネリア、でもプラスチックスーツの光沢と身体にフィットしたあのデザインも捨てがたいと思わないかい?」

「ですが、ルルーシュのイメージだと……。」


 そんな感じで、ファティマスーツの談義が始まった、そんな時だった。
 部屋の入り口で、身体をワナワナと震わせている青年の姿に誰も気がつかない。
 その隣に立つ桃色の髪の毛の少女は、聞こえてくる話の内容にアラアラと微笑んでいる。
 しかし、隣で怒りを顕わにしている少年を見て、徐ろに携帯を取り出しボタンを押し始めた。
 そうして相手が出たのだろう、ニ・三言、言葉を交わした頃に隣から低い声が響いた。


「………ユーフェミア。」

「なんですか、ルルーシュ。」


 話の主である、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは顔を前に向けたまま呟く。その顔は、怒りで歪んでいた。
 折角のお顔が台無しです、とユーフェミアは思ったが口には出さない。


「俺は旅にでる。」


 その視線は遠い。
 彼の意図を正確に理解して、ユーフェミアは頷いた。


「分かりました、身体に気をつけてねルルーシュ。」


 そうして、手に持っていた携帯を差し出す。話し口を押さえていなかったので、今までの話は通話相手に筒抜けだろう。
 ルルーシュは携帯を手に取ると、即座に相手に告げた。



「という訳だ、ナナリー。」

『お兄様、お話しは総て聞こえております。』

「ナナリー、すまない。お前を一人残していくのは心が痛むけど……。」

『仕方ありませんわお兄様。大丈夫です、ユーフェミアお姉さまもコーネリアお姉さまも良くしてくださいます。咲世子さんも居ますから、心配なさらないで下さい。』

「ナナリー…」

『お兄様、ナナリーの心はいつでもお兄様のお傍に。ご無事をお祈りしております。』

「…っっ愛してるナナリー!!」

『愛してます、お兄様!!』



 感極まった様子で叫んだと思えば、携帯をユーフェミアに返しルルーシュは踵を返す。
 会議に出席するつもりで赴いた部屋を、振り返る事なく去るルルーシュの背中を眺めながら、ユーフェミアは小さく手を振ると部屋の中へと脚を踏み入れた。
 そして、未だにファティマ談義を続けている三人のところまで真っ直ぐに歩み寄る。


「お兄様、お姉様。」


 ユーフェミアの声に、漸く気がついたのかシュナイゼルがにこやかに笑みを浮かべてユーフェミアを見詰めた。


「おや、ユフィ遅かったね。ルルーシュはどうしたんだい?」


 一緒に来るんじゃなかったのかな、と。後ろに視線を流すが弟の姿は見つからない。その事に首を傾げるシュナイゼルに、ユーフェミアは手にしていた携帯を持ち上げた。


「その事についてナナリーが怒っていますわ、お兄様、お姉さま。」


 通話は途切れることなく、少女と繋がっている。


『お兄様方、コーネリアお姉様。どういう事なのか、説明して下さいますよ、ね……?』


 一体何度目だと思っているのですか。
 携帯から、そう囁くような可愛らしい声が響く。
 しかし。
 それを聞いた三人は、同時に身体をビシリと固めてしまった。
 ニコニコと微笑みながら携帯を差し出すユーフェミアの額にも、よくよく見れば青筋が浮かんでいるではないか。

 話しを聞かれていたということに漸く気がついた三人は、迫り来る非難に顔を青ざめさせた。
















 こうして、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは寒さの強まる中、雪で覆われたキョウトの屋敷へと足を踏み入れたのだ。









2009/01/10


ナナリーは公式どうり、目も脚も不自由です。でも騎士。これは譲れません。
そのうちルルとガウェインに乗せちゃおうかと画策中です。
ロイドなら、スザクとナナリーのシンクロ装置を作ってしまいそうだよね。スザクの目を通して周りを見て、ルルーシュの作戦を行動に移す(操縦のほぼ全部)のがナナリー、てのもいいんじゃないかと思いました。
妄想の粋を出ませんがね。
だってシンクロナイズドフラッターは、ルルファティマで使いたいから。