ファティマパロディ、です。
ルルーシュは最弱騎士、スザクは超ド級スーパーファティマ。

原作好きの方は、世界観を壊している気がするので回れ右でお願いします。
オッケーな方はどうぞvv


































 湧き起こっている硝煙と怒涛の地鳴りに、機械の奏でる独特の駆動音。
 鳴り止まない喧騒の中、ルルーシュは固唾を呑んだ。


「オイ…っっ、本当にあの中に突っ込むのか?!」


 不安を滲ませた問いかけに、無常にも相手はそんな気持ちを汲んではくれない。


『チャンスです!五つ以上の騎士団と傭兵が乱戦になっています。』


 その言葉に、あぁやっぱり行かなきゃならないのか、と諦めをもって操作レバーを握り締めた。


『ご安心を!お任せ下さいっ!!マスターが確実に星を取れる様に、一番弱そうな騎士とMHを探していますっ!!


 その言葉に僅かながら引っかかりを感じながらも、兎に角とルルーシュは覚悟を決める。


「ほ…本当だな?信じるぞっっ!!」


 そう、半ばヤケクソ気味に叫べば、上部にあるコクピットからの通信が喜色に震えた。


『イエス、マスター!! この子の全方位スキャナとシーカーで一番パワーの無さそうなMHと一番動きの鈍い騎士を。大丈夫です、いざとなったらマスターの舌先三寸の理論攻撃って禁断の手もあります!!』


 嬉しそうに話す声を聞けば、ルルーシュは不安に震えそうな身体が少しずつ収まっていくのを感じる。
 大丈夫だと何度となく胸の中で呟く声は、この声の主が傍にいるからだと分かっているからだ。だから、もう何度となく呟く言葉を、今度は確信として胸に抱く。握り締めた操縦桿が、手に感触をまざまざと伝えてくる。それでも、通信で繋がっている相手に。全幅の信頼を寄せて前を見据えた。

 その頃、上部コクピット内で舌打ち交じりに呟かれた言葉の内容が、その耳に届かなかったのは幸いだったろう。


「…チッ、どいつもこいつも並以下のカスばっかりだな…。正体不明の黒いMHの集団でも居ればと思って来たのに。」


 不穏な空気を滲ませて、シグナル音を響かせるコクピットの中で据わった瞳が光る。


「大体、天位クラスの騎士でももの足りない位だけど…。ここらの雑魚を何機食っても何の足しにもならない……」

『……なっ、何か言ったか?スザク?』


 途端に聞こえてきた声に瞬時に声色を変え、表情が変わる。それが声のみの通信であった為に、主には届かないのが良いのか悪いのかは、神のみぞ知る、だろう。


『いえっ、何も!あっ!いましたっ』


 コクピット内に、電子音が響く。その音と相手の存在を告げる声に、ルルーシュは顔を上げた。


『一番弱そうで動きのにぶーいMH発見!乱戦を利用してこの子のコンシールモードで一気に行きますっっ!』


 操縦桿を動かせば、操作に合わせてキュウンと駆動音が響いてMHの脚が動く。


「ど…どれだっ?相手って!!」

『こいつです、マスター!!』


 その声と共にモニターに映し出された相手の姿に。その習性から動かそうとしていた操縦桿を、思わず握り損ねてしまった。


「…ぅぅぅうそだーーーっ、なんか凄く強そうだぞーーーーっっ!!」

『気のせいです、マスター!!』


 動揺と共に吐き出された弱音を、にべもなく切り捨てられる。目の前では、自分達の存在に気が付いたのだろう、相手のMHが正面を向いた。


『このランスロットと自分を信じてっ!コントロール、渡しますっっ!!』

「えぇぇぇぇっっ、本当にぃぃぃぃ」


 それでも。腕は身体は、操縦桿に込める力を緩めない。
 喩えそれが、相手による操縦が殆どだったとしても。






























「うわ……本当に始めちゃったわ、あの子…」


 離れた岩場の間で、その様子をカメラで捉えつつ見つめていた金髪の少女は呟いた。


「大丈夫かなぁ…。ダメダメェ〜な予感……」


 心配げに、手元のパソコンに映し出される映像ではなく、目視で前を見据える。
 瞬間、背後から唐突に声が響いた。


「駄目は余計だ、ほっとけ!…くそ、間に合わなかったか!!」


 後ろを振り向けば、不遜な態度で立ち尽くす黄緑色の髪の毛の少女が居た。


「貴様…なぜ止めてくれなかった?あの子がどれほど騎士として一片の才能もなくトロくてニブくて弱くて使えなくて頼りないやつか、知ってるだろう?」


 多分、本人が聞いたら怒りで顔を真っ赤にするだろう事をスラスラと言葉に乗せる。


「知ってるわよ!でも止められなかったの!!お家が取り潰しになりそうだから、白星ひとつでもあげて何とかしたいって……」


 ソコまで答えてから、少女は不意に思い出したのか首をかしげた。


「って、貴方誰?身内?あの子の?」

「ただの知り合いだ。」


 けれど、黄緑色の髪の毛の少女はその言葉だけで詮索を打ち消してしまった。


「で?貴様、あの子の家の事情をどれほど知っている?」


 岩の中腹に立っている少女よりも下の岩場で、黄緑色の少女は腕を組みながら見上げてくる。
 首を返した状態のまま、問いかけられた内容に少女は答えた。


「ブリタニアの騎士家なんでしょ?それも相当下級の家ね、だってあの子の家の名って聞いた事もないし。言っちゃ悪いけど、ここで白星あげたところでって感じ……かしら…」

「まぁな………その通りだ。」


 妙に歯切れの悪い返事に気にする事なく、少女は前を振り返ると状況を確認しながら では確認できない空間をジッと見つめる。


「そぅよぉっっその上、天然ダメファティマとあんなショボいMHで何が出来るっていうのよぉぉっっ、馬鹿―――っっっ」


 ギュウと両方の拳を握り締めて力説する様子から、本心から心配しているのだろう。


「とりあえずーーーっ、白星なんていいから、怪我するんじゃないわよぉぉぉっっ。しても、首吹っ飛ぶ以外は治してあげるからァ―――っっ」


しかし、その発言の内容に。黄緑の髪の毛を揺るがした少女は顔を歪めながら俯き呟いた。


「……ショボい…………MH………。その神をも恐れぬ暴言は聞かなかったことにしてやるが、あのファティマのこと何も知らないのか?」

「は?……」


 言われた言葉に、少女は緩いウェーブのかかった金髪を靡かせて振り返る。


「アレはキョウト六家の最高傑作“クルルギ”だ。星団中の騎士やマイトが探し回ってる行方不明の超ド級スーパーファティマだぞ。」

「冗談言わないでよォォォ!!」


 バッと、身軽な身のこなしで少女は岩の上へと乗りあがった。


「アタシを誰だと思ってんのヨっっ、ファティマ・マイト、ミレイ・アッシュフォードっ!!星団4大マイトの一人だ―――っ!さっきから何よ、この失礼な人ぉっっ」

「ココで立つと危ないぞお前。」


 岩の上で仁王立ちで胸を張るミレイに、黄緑の少女は鋭い突っ込みを入れる。


「まぁ……な。アソコのファティマはトラブル避ける為によく素性隠してあるし。性格悪いってことだな。」


 仕方ないかもしれないが、と。
 小さく呟いてから、煙幕で見えない戦場へと視線を投げた。


「で……、やっぱりやりやがったか、クルルギめ…。」


 仕方ないなとばかりに、呟かれた声には諦めの色が濃い。



















 真正面から剣を翳したランスロットは、けれど威力が弱いのかそれとも操縦の才能が無いのか、有り得ないペチリとした軽い音を立てて開いてのベイルに弾かれた。


『弱いやつですっ!ほらっ、相手の攻撃、全然当たりません。楽勝ですよ、マスター!』

「ほ…本当だな? か、勝てるのか俺たちっ」


































「あのMH……アシュラ・テンプルか。騎士は天位騎士。多分この戦場では桁外れに強い。」


 地鳴りの中で、黄緑の少女が小さく呟く。その声を聞いて、ミレイは冷や汗を浮かべた。


「え…? どうゆうこと?」


 桁外れに強いって、桁外れに弱いの反対?
 そう呟くミレイに、少女は呆れた視線を向けた。


「…お前……本当に何も知らないんだな?クルルギのこと……それでもマイトか?」


 その声に、ミレイは指を突きつけて叫ぶ。


「クルルギだか何だか知らないけど、あのファティマについちゃー、イヤんなるほど聞いてるワっ!!聞かしてあげようかっ!!」


「だから立ってると危ないぞ……マジで。」


 硝煙と着弾音の響く中、岩の上に立つミレイの姿は傍から見ても危なかった。
 あれは五年前の事、と銘打ってから話し始めたルルーシュの姿を思い出しながら、ミレイは顛末を話し始める。
 ルルーシュが家を飛び出して、遠い親戚の家でメイド(本来ならフットマン(従僕)かヴァレット(近侍)なのだろうが、その時ちょうどメイドが足りないから、とメイドになった)のバイトをしていた時に出会った、使用人仲間だったのだと。
 そしてバイトが終了する前日、同室だった為に床に押し倒され。
 離れたくない、と。言うことを何でも聞くから、“ご主人様”と呼ばせて欲しいと言われたのだそうだ。


「気が付けーーーっ、馬鹿ァァァァっっ!!普通、人間じゃないってコトくらい分かるだろーーーーっっ」


 オラァ、とばかりにミレイは戦場へと向けて雄たけびを上げる。


「無理だな。あの家系は全員そういうところのネジがゆるんでるんじゃなくて抜け落ちてる。」

「だいたい、ファティマに押さえ付けられて振りほどけない騎士って何なのよ!!」

「お恥ずかしい………」


 いや、まったく。
 小さく呟いた声には気苦労が見え隠れしていた。



























 その頃戦場では。



「大丈夫かスザク?疲れてないか?」

『だ…大丈夫です。も………もう最高!』

「え??」

『い、いいえっ、コッチの話!』



 そんな会話が繰り広げられていた。

























「ファティマ・クルルギ。信じる信じないは別として、教えておいてやろう。」


 金色の瞳をスイとミレイへと戻すと、少女はそう呟いた。


「キョウト六家のトウドウ、アサヒナを上回るスペックを持つ正真正銘の最高傑作。しかし六家はそのクルルギに更なる高度なプログラムを与えた。」


 最高スペックの値である“3A”を更に上回るためのプログラム。


「“自己鍛錬プログラム”自らの持つスペックにさらに磨きをかけるため、クルルギが選んだ結論は“弱い騎士をパートナーに強い騎士と戦う”」


 その言葉に、ミレイは唖然とする。


「……へ?」

「アレが求めるのは最も苦戦する戦いだ。そのためのパートナーは強い騎士、並の騎士ではだめだ!クルルギの性能では、並の騎士ですら殆どのナイトメア戦は楽勝となる。それでは意味がない。」


 モニターの中では、真白いMHと重厚なMHが距離を開けながら互いに動かないでいる。


「従ってクルルギは最弱クラスの騎士を求め、強力な騎士とナイトメアだけを相手に戦うことによって自分の能力を鍛え上げる!」

「ちょっと……貴方……」

「何と見事なプログラム!さすがキョウト六家、誰にも真似は出来ない……」


 瞳を閉じ感服した様に呟く少女に、ミレイは内容から導き出した結論にワナワナと身体を震わせた。


「弱い騎士しか選ばないってコトは………、星団最強のスペックが全然意味ないじゃないっ?」


 キョウト六家って、アホなの?
 そう呟くミレイに、少女は小さく鼻を鳴らす。


「ならば聞くが、貴様自分の最高傑作にそれが出来るか?それが出来る者こそ、プリマ・クラッセと呼ばれるのだ!何故だ?それは最高作が生まれた瞬間に“次”が見えるからだ!」


 不適に笑い、少女はミレイをじっと見据える。


「凡人から見ればクルルギは欠陥品で失敗作だ。だが超一流のファティマだ。ミレイ……一流を目指していれば二流に終わるぞ。」


 自分だけを追え。
 そう笑みを浮かべている少女を見詰めながら、ミレイはそれでも視線を外すことが出来ず。
 ただ小さく、本当に小さく。


「……な、なによ…。」


 そう返すことしか出来なかった。


























「…ま、マスター…僕の想像以上に凄い…ここまで弱いとは……!!こっ、この僕の能力をここまでレッドゾーンにぶち込みっばなしだなんて…」


 コクピット内で、相手のMHの動きを警戒しながらも、スザクは誰にとも無く呟いた。


「いくら生体演算機といわれるファティマにとって、こんな凄い大脳フル回転……オーバーヒート気味だよ……」


 毎秒36兆5千億回の予測演算とMHコントロール。それでもアシュラ・テンプルとほぼ互角。
 失神してしまいそうだと、スザクは息をついた。


「だってこの子……星団最強のMHなのに!そのパワーでも“ぺちっ”…って……、ロイドさん、セシルさぁんっっ」


 小さく囁くような呟きは、力ないものと聞こえただろう。
 しかし。
 俯いたその表情は、喜色に満ちていた。
 釣り上がった口端に、眇められた瞳。傍からみれば笑顔と取れなくもないその表情は、ルルーシュが見たら恥も外聞も無く脱兎の如く駆け出しただろう。
 捕食者と表現するのが相応しい表情を浮かべて、スザクは指先を手元のコンシールへと走らせる。
 どれだけ苦戦を強いられようが、負けるつもりはない。
 やっとで見つけたマスターなのだ、ここで負けて失望されるだなんて有り得ない。
 共に歩いていくと決めた、その決意を誰にも邪魔されるものかと。スザクは笑みを浮かべたままで顔を上げる。


「マスター、行きますよ!!」


 声と共にMHが動きを見せる。返事は無くとも、意思は通じているのだ。その高揚感をどう表現していいのか判らない。
 誰よりも優先するべき対象の、マスターの為に星を取る。それだけを頭にコントロールに専念する。
 カウンターを取られる計算も同時に、コントロールを補助していれば。
 相手の間合いに入った途端、相手MHの肩の部分から爪のような鉤状の武器が飛び出した。


「!! あ!」


 瞬時に回避プログラムを展開させるが、何パターンを演算しても回避することは出来ないと判断する。


「マスター、回避不能!対ショック、脱出準備を!!」


 叫びながら、コクピットの排除操作をしようとコンシールに指を伸ばせば、耳に主の声が届く。


『な…何だ?あの爪は?』


 多分、気を取られたのだろう。


『あっ!!』


 焦った様子の声が聞こえたと同時に、機体がグラリと揺れる。岩場に足元を取られたのだと気付いたのは、その時だ。


『うわぁぁぁぁぁっっっ』


 横転する、その途中。
 バランスを取ろうと、振り上げた腕には剣が握られており。


「え??」


 それが丁度、相手MHの肩部分の武器をへし折ったのだ。
 信じられないと何かを叫ぶ相手騎士の声が響く中、スモークが打たれ相手のMHの姿が見えなくなる。
 相手の姿が緊急離脱したと同時に、ランスロットは地面に背中を付けていた。
 衝撃が済んでから、スザクは急いでコクピットを開けて下側のコックピットへ向けて声をかける。


「マスター、大丈夫ですか!?」


 まさか今ので怪我とかしていないだろうな、と焦りながら身体を半分外に出して叫ぶ。
 しかし、そんな事に頭が回らないのだろう。


『あぁぁぁぁっっ、すまないっっ、滑って転んでしまったーーっっ』


 ルルーシュは半分涙声でコクピット内で大声を上げていた。


『こ…壊れたか?壊しちゃったかぁ?? セシル、泣くかなぁ???』


 どうしよう、と殆ど泣き出しながら呟く。


「…マ、マスター大丈夫です。お、落ち着いて下さい……!」


 ズルリと身体を装甲の上に滑らせて、スザクは力なくソコに寝そべってしまう。


「…“すべって転んだ拍子に剣が当たった”…………凄すぎるっ!!!!!」


 ヒクヒクと身体を震わせて、スザクはコクピットの外で呆然と呟いた。


「僕の大脳、あらゆる意味でショート寸前………」


 もう駄目だ。
 乾いた笑い声を上げながら、スザクはルルーシュには聞こえない言葉を空へと吐き出す。
 56兆7000億回の演算が意味無しだ。
 もしかすれば、頭から湯気でも出ているんじゃないかと思える位の疲労を感じ、指一つですら上げられない。
 パサリとスーツのボンネット部分が頭の後ろ側で音を立てた。重力に従って落ちてきたのだろう、けれどスーツを直す余裕もない。
 しかしながら。
 何度も明記するが、その瞳の色は喜色そのもので。
















 ブリタニア公国、第十一皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの初陣はこうして終わり。
 回収されたランスロットとその戦闘データを見て、MHマイスターのロイドは声を上げて笑い、MHマイトのセシルは青ざめて声を失ったのだった。









2008/11/16 途中まで
2008/11/23 追記更新



ち*あ→ルルーシュ、ヒュー*ラン→スザク、桜*→ミレイ、ワルツ・エ*デ→C.C.の配役です。


ただの妄想のつもりだったんですが、結構本気になりました。
もう一つのルルーシュファティマも時間があったら練りたいです……。
ナナリと二人で嫁に行くんだよ。
そんな二人(ルルとナナ)は二人で一人で。
互いに同調することで最大能力までを発揮、とか。
アレ、もしかして……シンクロナイズドフラッパー、か。そうだな……。
でも主がスザクなので、機体はランスロットだから………二人揃っての呼び名をブラックナイトにすれば…?
いやいや、それは黒の騎士団で使えるな……。

あらやだ、コッチも楽しいかもしれません。
ナナリは公式どうりに眼と脚が不自由にして。ルルとシンクロするコトでコントロールするんです。
やばい、止まらない……っっ