逃亡生活物語 その1 (21話発生)
とある場所の安ホテルの一室。
カーテンを引いた室内は薄暗く、何故か室内の中央にベットがある。中央にだ。
本来なら両側にあるベットを引き寄せ1つに合わせた、その中でもぞもぞと動く塊が2つ。1つはピクリともしない。
川の字に並んだ塊が、不意に両側だけ起き上がった。
「……朝だな。」
ポツリと小さな声が漏れる。サラリと長い黄緑の髪の毛を揺らし、C.Cは隣に声をかけた。
「…普通におはようとか言えない?」
首を回しながら呟いたスザクは、未だ夢うつつの瞳で隣に視線を投げた。栗色の癖毛が寝起きの為か余計に跳ねている。
そして二人同時に、真ん中でまだ夢の中の躯を見下ろした。
クゥクゥと寝息が漏れてきて、二人は同時にため息を吐く。
そのままスザクは起き上がり、身支度を整え始めた。
「ルルーシュが起きるまでに、朝食の食材調達してくるよ。」
それまで見てて、とC.Cに声を掛ければ。僅かに窓の外に意識を向けた彼女が至極真面目に視線を寄越す。
「枢木。」
変装用の衣服を見繕っていたスザクは何だろうとふと手を止めた。
「今日はスザ子にしておけ。」
見つかったら面倒だ、と。両腕に抱いた黄色いぬいぐるみに顎を乗せるC.Cに、スザクは思い切り眉根を寄せた。
黒の騎士団とブリタニア軍との捜索網が迫っている中、どうにか三人は網の目を逃れながらブリタニア本国を目指している途中だ。
「お前が思っているよりも狡猾だぞ、あの男は。」
ルルーシュの事もあるしなと、視線を未だ眠っている塊に注いで呟かれて。スザクはため息を吐きながら天井を仰いだ。
次の瞬間には、作り付けのクローゼットの中から変装用の衣服を手に取り、ベットへと戻ってくる。
自毛に合わせた色のウィッグが混じっているのを見てC.Cは小さく吐息を吐いた。
ゆったりとしたチュニックに黒のレギンスで筋肉質の太腿を隠す。ブーツを履いてウィッグを被りツバの広い帽子で顔を隠せば。
「…今日も可愛いぞ、スザ子。」
「誉めなくて良いから。」
複雑そうな表情で呟くスザクに、C.Cはヒラヒラと手を振る。
「冷凍で良いが、ピザを忘れるな。」
扉を開けて出て行こうとするスザクの背中にそう呟くと、またかとでも言いたげな視線を寄越されるが、C.Cはソレを鼻で笑ってやった。
「…で、今日は何でまたその格好なんだ?」
朝食の席。テーブルに並んだベーコンとスクランブルエッグにライスと味噌汁という簡素な料理と冷凍ピザを囲みながら、ルルーシュは女装したままのスザクに問いかける。
「聞かないで。」
箸(即席)を握りながら、スザクは耐えられないとでも言いたげに呟く。しかしこの後、更に調達しなければならないものがあるので女装を解く訳にも行かず。
背中まで伸びたウィッグを煩わしそうにしながら、朝食を摂るスザクにルルーシュは首を傾げるしかなかった。
C.Cは既に何も言わない。
2008/09/01
妄想の赴くままに書いていけば、とんでもないものになるのでこんな感じで更新を。
こんな風に三人で生活してても良いんじゃないですか。
スザルルの中にC.Cいても可愛いよね。