サイトに掲載した『人形と騎士』の冊子版、『oblivious』のサンプルです。
かなり湾曲していますが、FSSパロディです。
超ド級ファティマ×最弱騎士。



















一章《再会はそよ風のように》


(抜粋)


 実際、国を飛び出してからルルーシュがこの屋敷でのバイトをすると決めるまで、そんなに時間はかからなかった。母の急逝後、ブリタニアと大洋を挟んだ先の島国であるこの国に、ナナリーと二人で預けられたことがあったから。
 そのときの滞在先がこの屋敷で、仲良くなった一人の子供がいた。その頃の思い出と大切な約束があるからこそ、伝手を頼ってこの屋敷にバイトとして雇ってもらう事に決めたのだ。
 この屋敷の主人はすでに亡くなっていて、家族もなく居るのは使用人達ばかり。その事実を知り、ルルーシュはその子供に会うのは無理かと思った。屋敷の人間なのは分かっているのだが、主人の家族だったのか、それとも使用人の子供だったのかはハッキリしていないのだ。
 それでも、一年足らずの間過ごした日々の事は決して忘れられるものでは無かった。初めての友達で、初めて大切だと思える人物に巡り合えたのだ。最後に見たのは、玄関の前に立ちながら大きく手を振っていた姿。その光景を忘れない様にと何度も思い出し、日々を過ごしてきた。
 あの頃のように、ナナリーと三人でもう一度、あの懐かしい日々を取り戻せたら。それだけを思ってルルーシュはこの屋敷を訪れた。
 とりあえずは目先の仕事へと黙々と従事し、暇があったら聞き出そうと決意して、何とか仕事にも慣れてきた頃。
 それは訪れた。





 呼び出されたホールで、執事の隣に佇む青年の姿に。ルルーシュは言葉を発することが出来なかった。

「ルルーシュ、紹介しておきましょう。」

 執事の声に、ようやくルルーシュはハッと思考を動かした。
 柔らかな栗色の髪の毛は所々が癖っ毛で跳ねている。瞳の緑は眩しい位に輝いていて、ルルーシュはどうしても意識を遠い昔に飛ばしてしまう。

「……ルルーシュ?」

 ニッコリと。人懐こい笑みを浮かべて、名前を呼ばれ。

「………スザク、なのか?」

 モーニングスーツを身に纏い、柔らかい笑みで懐かしそうに見つめてくる相手に。ルルーシュはそれだけをやっとで口にする。
 途端、喜色に満ちた笑顔が青年に浮かんだ。

「ルルーシュ…、やっぱりルルーシュなんだね。」

 懐かしいよ、と。細められた翡翠は、昔とちっとも変わっていない。
 歩み寄りながら差し出された両手をためらい無くギュウと握り締めて、ルルーシュは目の前で微笑む瞳を見つめた。
 目の前にいる青年の姿に、昔の記憶にある少年の姿が被る。
 癖のある柔らかな栗毛も、鮮やかに光る緑の瞳も。何も変わることなく存在していた。

「本当にスザクか?本当に?」
「そうだよルルーシュ、久しぶり。」

 もう7年になるのかな。そう言って小首を傾げながら優しく手を握り返してくれる。
 ルルーシュはそれだけで、何も言えなくなってしまった。
 手を繋いだまま何も言えずに立ち尽くすルルーシュに、スザクは笑みを浮かべたままだ。ルルーシュが落ち着くまで待つつもりなのだろう。
 そんな二人に助け船を出したのは、執事だ。

「ルルーシュ、スザクは今まで別館や地下を中心に担当していたのです。それが先日貴方を見かけたらしく、私に声をかけてきましてね。もしかしたら、貴方が此処に来た目的のひとつに彼の事があるのではと思ったので、こうして引き合わせたと言うわけです。」

 今日からルルーシュと同じ部屋にさせますよ、と呟いて執事は笑う。
 嬉しそうに頬を緩ませたルルーシュは、執事を見つめて慌てて頭を下げた。
 その時。
 スザクと執事が笑顔のまま、拳を握り締めたのが見えなかったのは、ルルーシュに取って良かったのか悪かったのか。

(グッジョブ!!)
(合点です!!)

 人の食えない笑顔を浮かべる二人の表情を微塵も疑わないルルーシュには、悟ることなど無理だったろう。















































四章《契約は不意打ちに》


 ルルーシュはパタパタと足音を響かせて自室へ向かっていた。
 あの後、どうした事かスザクの姿を見かけることは無く、大切な話をしなければならない焦りから息を切らせて部屋のドアを開ける。

「スザク!!」

 バタンと扉を開ければ、部屋の中でスザクは項垂れたままベットに腰掛けていた。

「スザク、話が」
「ルルーシュ。」

 ルルーシュの声を遮るようにスザクが声を発した。同時に上げられた視線は酷く冷たくて、ルルーシュは思わず口を噤んでしまう。

「ルルーシュ……明日で帰ってしまうって、本当なの…?」

 据わった視線は酷く恨めしげで、初めてみるスザクの表情に返事を返すことが出来ない。

「…本当なんだね、ルルーシュ。」

 スッと音を立てることなく俊敏な動作で立ち上がり、スザクは立ち尽くしたままのルルーシュへと腕を伸ばした。
 その腕が自分に向かって来るのをルルーシュはただ見つめていた。だから反応が遅れたのだ。

「っ!!」

 引きずられるようにして、ベットの上に躯を投げ出される。背中がスプリングに跳ね返されたと同時に、上から圧し掛かるスザクの掌が肩をベットに縫い付けた。

「ルルーシュ、また僕を置いていくの……?」
「スザク…?」

 何を言うんだ、とルルーシュは真上に覆いかぶさるスザクをジッと見つめ返した。けれど逆光でスザクの表情は伺えない。

「ルルーシュ、僕はもう離れたくない…」

 泣きそうな声が悲痛に響く。表情は伺えない、けれどきっとスザクは昔の様に眉根を寄せて泣くのを堪えていると、ルルーシュは感じた。

「…お願いだよルルーシュ、一緒に居たい、ずっと傍に居たい、もう離れたくない。……置いて、行かないで…」

 呟きと共に、右肩にスザクの額が押し付けられる。掠れた声が、スザクの心境を物語っている気がして、ルルーシュは無意識に両腕を持ち上げ、動かせる範囲でスザクの背中に腕を廻した。

「スザク…スザク、俺だって同じだ。離れたくない、一緒に居たい。俺がお前を探しに来たのは…お前に傍にいて欲しかったからなんだ。」

 別れの時の言葉を、ルルーシュはずっと忘れないでいた。

「お前が、思い出せば傍にいられると言っていたから…何度も何度もお前を思い出したよ。辛いときでも、お前の事を思い出せば乗り越えられた。本当に、お前は俺を…俺とナナリーを護ってくれたんだ。」

 ゆっくりと、ルルーシュはスザクの後頭部を撫で付ける。柔らかい髪の毛の感触に、自然に笑みが零れた。

「すぐにお前が見つかると思わなかったから、此処で手がかりがなければこの国を探し回ろうと思ってた。その……お前を探すことだけを考えていたから、お前と逢えて全て忘れてしまっていたんだ。お前と逢ったらどうしたかったのかとか、バイトが何時までだったのかとか。」

 すまない、と謝れば。ノロノロとスザクは顔を上げて至近距離でルルーシュの瞳を見つめてくる。
 不安そうに眉を寄せた表情に、ルルーシュはツキリと胸が痛んだ。

「悪い…本当は最初に話すべきだった…。家を出て、直ぐに思いついたのはお前を探す事だった。今しかないと思ったんだ…、此処で過ごした時間をもう一度お前と…ナナリーと三人で過ごす事が、俺が望む総てで。ブリタニアから離れられた今しか、お前に手が届かないと思ったから。お前が見つかったら直ぐに言うつもりだった。俺と一緒に来てくれと、また…昔みたいに三人で一緒に暮らそうと、そう言うつもりだったんだ。…ゴメン、スザク。」

 不安にさせた、傷つけた、怖がらせた。それだけがルルーシュの中で渦を巻く。こんなにも辛そうな表情を、させたい訳では無かったのだ。

















ルルーシュがフタナリですので要注意ですヨ!!!!!!!!!