携帯のお話 その2     アナザワールド設定一年後、ラウンズ3・7コンビ
                 (このスザクさんは特区成立後に本国に連れて行かれラウンズに昇格しています。)












 エリア11政庁内の廊下を、身に付けたマントを颯爽と翻しながらスザクは心此処に在らずといった様子で歩いていた。


「スーっっ、ザクっっ!!」


 途中でイキナリ声がしたかと思えば両肩に衝撃が襲う。


「……ジノ、重いから。」

「良いじゃないか、私たち友達だろう?」


 うんざりと云った表情で呟くスザクに、後ろから抱きついたジノがそう問い返せば。


「……ジノは友達の定義を間違えてるよ。」


 もの凄く嫌そうな表情で返されて、ジノは途端に黙り込んでしまう。
 その顔は、別に良いけどね、とか色々と諦めの境地に入り込んだものだったりする。けれどジノの特技は、それら全てを一瞬で忘れてしまう事だった。


「あ、そういえばスザク、お前携帯換えに行ったんだって?」


 アーニャがスザクに見せてもらったって言っていたぞ、と。
 だから自分にも見せろと言いたげに顔を輝かせてくるジノに。スザクはジトリとした視線を送る。


「…ジノ、僕もう今日の仕事終ってこれから帰る所なんだけど。」

「携帯見せるくらいなら時間かからないだろう?」


 良いじゃないか、と。口を尖らせたジノを見て、面倒だなぁと思いつつもスザクは騎士服のポケットから携帯を取り出した。


「ホラ、これ。」

「んー…、凄いシンプルなのな。普通のデザインのにすれば良かったのに。」

「君らの普通は、デザインが華美すぎて使いにくいから。」


 何のために変えたと思ってるんだろうと思いながらもスザクは呟く。ジノやアーニャからすればブリタニアのデザインの方が普通なんだなぁ、と今更ながらに気づいた。


「あぁ、でも綺麗な色だな。」


 ジノの声に、スザクは一緒に店頭で選んでいた人の姿を想い出す。


「……大事な人の、瞳の色だよ。」


 そう告げた時の驚いたような照れたような表情が面白かったなぁ、知らずスザクは笑みを浮かべていた。
 しかし、ジノはスザクの言葉に衝撃を受けた様に顔を固める。


「え…、スザク……だってコレ、スカイブルー…」


 そう言ってジノはどうしようと云う表情を浮かべた。
 私はまだ其処まで思ってないんだけど、と小さく呟かれた言葉に、スザクは額に青筋を立てる。


「ヴァイオレットだから! 本体を良く見ろ!」


 誰がジノだと言った、と。爽やかな表情で怒りを顕わにするスザクに、ジノは携帯に視線を戻す。


「あぁ…表面のディスプレイがブルーのグラデーションなのか、なんだ吃驚した。」

「ビックリしたのはコッチだよ、本当に。」


 冗談は存在だけにしといてよ、と。何気なく酷いことを呟かれているというのに、ジノは気が付いていない。二人は並んだまま廊下を歩き始めた。


「じゃあ相手には自分の瞳の色の携帯とか持たせたりしたのか?」

「…そうしたかったけど、生憎機能が足りなかったりして、丁度良く行かなかったんだよね…。とりあえず、自分のイメージ出来る携帯を勧めたけど。」


 勧めたというよりも決定させたけど、とは決して言わない。


「イメージって?」


 どんなのだ、と問われてスザクは僅かに視線を上に向けた。


「…スタイリッシュ?」


 軽く首を傾げながらの言葉に、ジノはパチクリと大きく瞬きをした。


「それは携帯の事か? 相手の事か?」


 というか、その評価は相手に失礼なのではないか?と真面目に言われ、スザクは更に首を傾げる。そんなスザクの様子に、ジノは目を丸くさせた。


「いや…意味判ってるよな?」

「…朧気に。」


 確かこう、スレンダーとかそんな…洗練されたっていう感じ。
 そう呟くスザクに、ジノは瞼を伏せ口端を上げる。仕方ないなぁという表情にスザクは更に首をかしげた。


「意味が違うってか…流行の、とか。後は…粋なって言う意味だぞ。」


 それは何か違うんじゃないか?と。
 ジノが呟く。
 しかしスザクは顎を押さえるとそのまま考え込んだ。


「いや………、」


 粋、という言葉の意味を理解しているスザクからすれば。


「丁度いい?」

「私はお前の頭の中が良く分からない。」


 失礼だから、それ普通に失礼だからな?
 今度こそ呆れた声で呟くジノに。


「…なんで?」


最期までスザクは、ジノの言う失礼の意味を理解出来なかった。



















2008/08/28


たまにお馬鹿なお話を書きたくて仕方なくなります。
最近の本編の内容に、どうしてもナナリ入りのお話が書けなくて……。


補足
 アナザワールドのスザクさんは、特区成立後はユフィの騎士も解任されて個人として参加していたんですが、いきなり本国に呼び寄せられて、ルルの事を隠したい一身のユフィとコーネリアにも諭され独り本国に行きます。そのままラウンズに任命されてしまい、一年したら日本に帰るのを条件に必死にラウンズとして任務をこなし、漸く帰ってきたわけです。
 そんなとこに、他の二人が押しかけて来たよ!

 そんな感じ(笑)
 すみません、不親切な説明で。